新しい命を授かり、心も体も大きな変化を迎える妊娠期間。多くの喜びと期待に満ちた日々の中で、「なぜか喉がイガイガする」「飲み込むたびに痛い」「風邪かな？」といった喉の痛みに悩まされる妊婦さんは少なくありません。夏の気温が高くなってくる時期においては冷房による感想や外気との温度差など様々な要因でと考えが及んでいきますよね。
「薬は飲んで大丈夫なの？」
「赤ちゃんに影響はないかな？」
「ただの風邪だと思っていたら、実は…？」
そんな不安を抱える妊婦さんへ。このページでは、妊娠中に喉の痛みがなぜ起こりやすいのか、そのデリケートなメカニズムから、安心して症状を和らげ、快適なマタニティライフを送るための具体的な対策まで、誰にでも分かりやすく、そして詳しく解説します。妊娠中のママさんに寄り添い、喉の痛みの悩みを解消し、穏やかな気持ちで赤ちゃんとの時間を過ごせるよう、一緒に知識を深めていきましょう。
妊娠中の喉の痛み、なぜ起こるの？デリケートな体の変化が原因
妊娠中の喉の痛みは、妊娠による体の変化や、いつも以上にデリケートな状態が関係していることがほとんどです。単なる風邪とは異なる、妊婦さんならではの要因を理解することが大切です。
１．「免疫力の低下」
妊娠すると、ママの体は赤ちゃんを異物として攻撃しないように、免疫システムを一時的に抑制します。これは、赤ちゃんを守るための大切な体の働きですが、その結果、ママ自身の免疫力も低下しやすくなります。
- 風邪やインフルエンザなどへの感染リスク増大：免疫力が低下すると、ウイルスや細菌への抵抗力が弱まり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。これらの感染症の初期症状として、喉の痛みやイガイガ感が出ることが非常に多いです。
２．「ホルモンバランスの変化」
妊娠中は、プロゲステロンという女性ホルモンが大量に分泌されます。このホルモンは、子宮の収縮を抑え、妊娠を維持するために非常に重要ですが、体の他の部分にも影響を及ぼします。
- 鼻粘膜の腫れ・乾燥：プロゲステロンの影響で、鼻や喉の粘膜が腫れやすくなり、鼻詰まりや鼻炎のような症状が出やすくなります。鼻詰まりがあると、無意識に口呼吸になり、喉が乾燥しやすくなります。
- 胃食道逆流症（逆流性食道炎）：プロゲステロンは、食道と胃の間の筋肉（下部食道括約筋）を緩める作用があります。これにより、胃酸が食道に逆流しやすくなり、喉の奥や胸焼け、喉の痛みを引き起こすことがあります。妊娠後期になると、大きくなった子宮が胃を圧迫することも、逆流を助長します。
３．「口呼吸による喉の乾燥」
妊娠中は、上記のようなホルモンの影響や、胎児の成長による肺の圧迫などで、鼻詰まりや息苦しさを感じやすくなります。これにより、無意識のうちに口呼吸になる妊婦さんが非常に多いです。
- 粘膜の乾燥と炎症：口呼吸をすると、空気中のウイルスや細菌が直接喉に届きやすくなるだけでなく、喉の粘膜が乾燥し、炎症を起こしやすくなります。これが喉の痛みやイガイガ感につながります。
４．「体温の変化と自律神経の乱れ」
妊娠中は基礎体温が高く、体が熱っぽく感じることがあります。また、ホルモンバランスの変化に伴い、自律神経（体の機能を無意識にコントロールする神経）も乱れやすくなります。
- 喉の違和感や不快感：自律神経の乱れは、喉のつかえ感や異物感、飲み込みにくさといった、喉の症状として現れることがあります。これは、ストレスや不安が原因となることもあります。
５．「アレルギーやハウスダスト」
妊娠を機にアレルギー体質が変化し、これまでアレルギーがなかったものに反応するようになるケースもあります。また、ハウスダストや花粉など、普段の生活環境にあるアレルゲンによって、喉の炎症や痛みが生じることもあります。
６．「その他、見過ごせない原因」
稀ではありますが、以下のようなより専門的な医療介入が必要なケースもあります。
- 扁桃腺炎：喉の奥にある扁桃腺が細菌感染などで炎症を起こし、強い痛みや発熱を伴うことがあります。
- 溶連菌感染症：細菌感染の一種で、喉の強い痛み、発熱、全身倦怠感などを引き起こします。治療しないと合併症のリスクがあるため、適切な抗生剤治療が必要です。
- インフルエンザ：通常の風邪とは異なり、高熱や全身の倦怠感が強く、妊婦さんの場合は重症化するリスクがあるため、早めの受診と治療が重要です。
- 声の使いすぎ：つわりなどで嘔吐を繰り返す、または咳が続くなどで喉を酷使すると、一時的に炎症を起こすこともあります。
このように、妊娠中の喉の痛みは様々な要因が絡み合って発生するため、それぞれの原因に合わせた対策を講じることが重要です。
「安心」と「快適」を！妊娠中の喉の痛み対策とセルフケア
妊娠中の喉の痛みは、日々の生活の中で意識的に対策を行うことで、症状を軽減することができます。ママの体調に寄り添い、無理のない範囲で取り組んでいきましょう。
１．「乾燥させない」が鉄則！加湿と水分補給
喉の乾燥は、痛みを悪化させる最大の原因です。
- 加湿器の活用：寝室やリビングなど、過ごす時間の長い場所では加湿器を使って湿度を50〜60%に保ちましょう。濡れタオルを干すだけでも効果があります。
- マスクの着用：就寝時や外出時にマスクを着用すると、喉の乾燥を防ぎ、吸い込む空気の湿度を保てます。
- こまめな水分補給：水、ぬるめのお茶、常温のスポーツドリンクなどで、喉を潤しましょう。喉が渇いていなくても、こまめに少しずつ飲む習慣をつけましょう。冷たい飲み物よりも、常温や温かい飲み物がおすすめです。
２．「刺激を避けて」喉に優しい食生活
食事の選び方や食べ方で、喉への負担を減らしましょう。
- 刺激物を避ける：辛いもの、熱すぎるもの、冷たすぎるもの、酸味が強いもの、固いものなどは喉への刺激となり、痛みを悪化させる可能性があります。
- 喉越しが良いものを：おかゆ、うどん、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルトなど、喉越しが良く、消化の良いものがおすすめです。
- 胃食道逆流症対策：
- 寝る直前の食事は避ける（就寝2〜3時間前には食事を終える）
- 一度に大量に食べず、少量ずつ回数を分けて食べる
- 食後すぐに横にならない
- 脂っこいものや刺激物を控える
- 寝る時に上半身を少し高くする（枕を高くするなど）
３．「清潔に」うがいと手洗い
風邪や感染症の予防には、基本的なうがいと手洗いが非常に重要です。
- こまめなうがい：外出から帰ったら、喉のイガイガを感じたら、うがいをしましょう。水だけでも良いですが、うがい薬（妊婦さんが使えるもの）や、塩水（コップ1杯の水に小さじ1/2程度の塩）も効果的です。
- 正しい手洗い：石鹸を使って指の間や手首までしっかり洗い、ウイルスや細菌の侵入を防ぎましょう。
４．「休息をたっぷり」免疫力アップと回復
免疫力を高め、体の回復を促すためには、十分な休息が不可欠です。
- 睡眠時間の確保：赤ちゃんが寝たらママも一緒に休む、昼間に横になる時間を作るなど、まとまった睡眠が取れなくても、細切れでも良いので休息をとりましょう。
- 無理しない：家事や育児を完璧にこなそうとせず、家族やパートナー、地域のサポートも積極的に頼りましょう。
- ストレス軽減：リラックスできる時間を作る、好きな音楽を聴く、軽いストレッチをするなど、ストレスを溜めない工夫をしましょう。
５．「市販薬の選び方と受診の目安」
市販薬の使用は、必ず医師や薬剤師に相談してください。妊婦さんが使用できる安全な成分と、避けるべき成分があります。
- 喉飴やトローチ：多くの喉飴やトローチは使用できますが、念のため成分を確認し、不明な場合は薬剤師に相談しましょう。
- 受診の目安：
- 喉の痛みがひどく、何も食べられない・飲めない
- 高熱（38℃以上）を伴う
- 呼吸が苦しい、ゼーゼーする
- 喉の奥に白い膿が付いている
- 咳がひどくて眠れない、お腹が張る
- 市販薬やセルフケアで症状が改善しない、悪化する
これらの症状がある場合は、すぐに産婦人科、またはかかりつけの内科医に相談しましょう。自己判断せず、専門家の指示を仰ぐことが重要です。
Q&A：妊娠中の喉の痛みに関するよくある疑問
Q1：妊娠中に喉が痛くなったら、まず何をすれば良いですか？
A1：まずは、喉を乾燥させないことが一番大切です。
- 水分補給：温かいお茶や水をこまめに飲み、喉を潤しましょう。
- 加湿：部屋の湿度を適切に保ち、寝る時もマスクを着用するなどして、喉の乾燥を防ぎましょう。
- 休息：無理をせず、体を休めることを優先してください。
これらのセルフケアで改善しない場合や、症状が悪化する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
Q2：喉の痛みに効く市販薬は、妊娠中でも安全に使えますか？
A2：妊娠中に市販薬を使用する際は、必ず医師や薬剤師に相談してください。妊婦さんが使用できる喉飴やトローチは比較的多いですが、風邪薬や解熱鎮痛剤の中には、妊娠中に使用を避けるべき成分（イブプロフェンなど非ステロイド性抗炎症薬の一部）が含まれているものもあります。自己判断での服用は絶対に避け、必ず専門家の指示を仰ぎましょう。
Q3：妊娠中に喉が痛い時、食事で気をつけることはありますか？
A3：喉への刺激を避けることが大切です。
- 刺激物を避ける：辛いもの、熱すぎるもの、冷たすぎるもの、酸味が強いもの、固いものは控えましょう。
- 喉越しが良いものを：おかゆ、うどん、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルトなど、喉に優しいものがおすすめです。
- 胃食道逆流症に注意：もし胃酸の逆流による喉の痛みであれば、寝る前の食事を控える、少量ずつ食べる、食後すぐに横にならないなどの対策も有効です。
栄養バランスも考慮しながら、食べやすいものを中心に摂りましょう。
Q4：妊娠中の喉の痛みが長引く場合、赤ちゃんに影響はありますか？
A4：喉の痛みが直接的に赤ちゃんに悪影響を及ぼすことは稀ですが、原因によっては影響が出る可能性もゼロではありません。
- ママの体調不良：ママが体調を崩し、食事が摂れない、睡眠不足が続くなどすると、ママの栄養状態や体力が低下し、間接的に赤ちゃんの発育に影響が出る可能性もあります。
- 感染症の場合：風邪以外のインフルエンザや溶連菌感染症など、特定の感染症の場合、ママの症状が重症化したり、稀に赤ちゃんに影響を及ぼしたりするリスクもあるため、早めの受診と適切な治療が重要です。
長引く場合は、無理せず医療機関を受診し、原因を特定してもらいましょう。
Q5：妊娠中に口呼吸がひどくて喉が痛いです。どうすれば良いですか？
A5：口呼吸による喉の乾燥はつらいですよね。
- 鼻呼吸を意識する：日中もできるだけ意識して鼻呼吸を心がけましょう。
- 加湿器・マスクの活用：部屋の湿度を適切に保ち、特に寝る時にはマスクを着用して喉の乾燥を防ぎましょう。
- 鼻詰まりの対策：蒸しタオルを鼻に当てる、温かい飲み物を飲む、鼻腔を広げるテープ（市販品）など、鼻詰まりを和らげる工夫を試してみてください。
- 耳鼻咽喉科への相談：鼻炎がひどいなど、鼻詰まりが慢性的な場合は、耳鼻咽喉科を受診して、妊婦さんでも使用できる点鼻薬や治療法について相談してみるのも良いでしょう。
口呼吸を減らすことで、喉の痛みが改善されることが期待できます。
まとめ：頑張り屋さんのママへ、大切なメッセージ
妊娠中の喉の痛みは、決して「甘え」でも「気のせい」でもありません。新しい命を育むために、あなたの体が頑張っている証拠であり、いつも以上にデリケートになっているサインなのです。
「このくらいの痛み、我慢しなきゃ…」「赤ちゃんのために、薬は避けたい…」——そんな風に、ついつい自分のことを後回しにしてしまう頑張り屋さんのママ、あなたの気持ちは痛いほどよく分かります。
でも、どうか忘れないでください。ママの心と体が健康でいることこそが、お腹の赤ちゃんの健やかな成長の一番の土台になります。あなたが笑顔で、心穏やかに過ごせることこそが、赤ちゃんにとって何よりの安心感であり、最高の贈り物なのです。
喉の痛みを感じたら、無理せず、まずは「喉を乾燥させない」「体を休める」ことを優先してください。そして、今日からできる小さな対策を、一つずつ試してみてください。完璧でなくても大丈夫です。不安な時は、一人で抱え込まず、かかりつけの産婦人科医や助産師、薬剤師に相談してくださいね。
【妊娠中の水分補給】ママと赤ちゃんのために！「水」があなたの最強サポーターになる理由
妊娠中は体温が高くなるって知ってた！？
コメント