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体験談

つわりとの闘い~あくまで働き続けることにこだわった私~

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30歳を過ぎて初めての子供を妊娠しました。
当時私は永く勤めていた会社で、店頭販売の仕事に従事していました。しかも販売していたものは、お菓子やパン。パンは毎日店頭で生地から作り、それを焼いてお客様に提供していました。

パン屋さん
妊娠がわかった時点ですぐに、一緒に働く仲間には報告しました。何かあってからでは迷惑をかけると思ったからです。仲間はとても喜んでくれ、協力できることがあれば何でもするからと言ってくれました。
私は妊娠の7ヶ月目まで働くことを会社と相談して決めました。それまで内務に移るのではなく、変わらず店頭で働かせてもらうようお願いしました。会社側は少し心配していましたが、お客様と接している方が少しでも気持ちが紛れるだろうという配慮もあったと思います。
最初の検診で、赤ちゃんを包むお腹の中の袋があまり大きくならないことを、担当医に指摘されました。専用の飲み薬が処方されましたが、できるだけ安静に過ごすように言われました。立ち仕事の販売業であることを伝えると先生は苦笑い。「なるべく周りの人に上手に頼ってください」というふうにアドバイスいただきました。

お菓子やパン屋というのは、周りが想像する以上にハードな仕事です。重たい物も持ちますし、鉄板を洗い、拭きあげるだけでも重労働です。みんなには申し訳なかったのですが、なるべくその仕事からは外してもらい、他のことで一生懸命頑張ることにしました。
周りの協力もあり、赤ちゃんを守る袋も順調に大きくなりました。ただし、その後私が苦しんだのは強烈なつわりです。話には聞いていたのですが、本当にドラマで見るように突然「ウッ」っとくるものでした。
毎時間焼きたてのパンが焼きあがるたび、その匂いは強烈に鼻につきました。特につらかったのはカリーナンの匂いです。それでもパンの焼き出しさえ出来なくなってしまったら、私が店頭にいる意味はありません。呼吸を止めながらパンを専用トレーにのせ「カリーナン、焼き上がりました!」と大きな声を張り上げていました。
水を飲むのも苦しかったのですが、唯一牛乳がつわりの救世主になりました 。すぐに牛乳を飲むことで、吐き気がスウっと治ります。お店で売っていた牛乳を何本か買いだめし、バックヤードに常備しておきました。具合が悪くなるとすぐ後ろに下がり、牛乳を一気に飲み、また売り場に戻るという繰り返しです。
8時間の仕事を終え家に帰る時は、ぐったりです。つわりが激しくご飯が炊ける匂いもダメだったので、約2ヶ月間主人に宣言をして、一切の料理作りをやめました。
つわりは病気じゃないとわかっていても、いつ終わるかわからないことに大変なストレスを感じました。テレビでケンタッキーの CM が流れるたびに「ウッ」となってしまいます。
音を吐いて、店頭販売から外してもらうようにお願いすることも考えましたが、「明日こそ良くなるかもしれない」という期待を込めて、そのことは言い出せずにいました。
私にはちっぽけなプライドがありました。例えば「お腹に赤ちゃんがいます」というキーホルダーも最後までつけようとはしませんでした。あくまでも普通に他の人と区別なく妊婦生活を送りたい、そう思っていたのです。
出産に対して後ろめたい気持ちもあったのかもしれません。少ない人数でお店を回してる中で産休を取らせてもらう自分。せめて子供が生まれるまではプレイヤーとして、しっかりカウントされたい、そういう思いが強くありました。
これは働いてる女性であれば、誰もが思うことかもしれません。産休制度やマタハラなど、女性を取り巻く環境がだいぶ変わってきてる時代とはいえ、まだまだ現場では色々思うところがあるのです。
つわりごときで甘えてはいけない、でも体がついていかない、最悪な事態が起こって逆に迷惑をかけてしまったらどうしよう・・・。つわりが治まるまではそのような葛藤の日々でした。

6ヶ月目に入った頃から、急につわりは落ちついてきました。食欲も正常に戻ってきて、顔色も良くなってきたと周りに言われました。
いざ産休の時期が来た時には体調は絶好調で、むしろ妊娠ぎりぎり9ヶ月目ぐらいまでは店頭に立っていたい!という思いがありましたが、そこはさすがに遠慮しました。
つわりの時が嘘のように、それまで我慢していたケンタッキーも貪りました。そして無事第一子を出産しました。

産休中に子供を連れてお店に行った時、仲間から「この子も一緒にお店に立ってたもんね」と言われた時は、すごくすごく嬉しかったです。お店の仲間の活気ある声や、お客様の笑い声、パンの焼ける匂いが、おなかの中の子供にちゃんと伝わっていたら嬉しいなと思いました 。
今では後輩にも産休を取るスタッフが増えてきました。自分の時に守ってくれたように、今度は私が後輩たちを守る番です。またこれからは、出産育児だけにかかわらず、親の介護などで休みを取るスタッフも増えてくることでしょう。お互いがお互いの家庭の事を思いやり合いながら、楽しく働ける環境が築けていけたらいいなと思っています。

パン屋さんで働く

これから妊娠しながらも働くお母さんがいるのであれば、ぜひ周りに感謝の気持ちを忘れず、上手に甘えてもらいたいなと思います。ストレスを抱えてしまってはお腹の赤ちゃんにも影響を与えますし、いい仕事はできません。気持ちが悪い時は気持ち悪い、つらい時はつらいとちゃんと伝えることで、結果いい仕事を生み出すことができると思っています。 もう少し肩の力を抜いて、あのつわりの時期を過ごしていたらなと、今になって振り返っています。

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