妊娠中は、お腹の赤ちゃんに酸素や栄養を届けるため、ママの体は通常よりも多くの血液を作り出します。このため、鉄分は妊娠前よりも多く必要となり、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、妊娠中の女性は1日あたり2.5mgの付加量が推奨されています。
鉄分が不足すると、貧血になりやすく、立ちくらみや息切れ、疲労感などの不調を引き起こすだけでなく、お腹の赤ちゃんの成長にも影響を与える可能性があります。
「鉄分をしっかり摂らなきゃ!」と意識している妊婦さんは多いと思います。ほうれん草やレバー、ひじきなどを積極的に食べている方もいるでしょう。しかし、せっかく摂った鉄分が、一緒に食べたものによってうまく吸収されないことがあるのをご存知でしょうか?
この記事では、鉄分の吸収を阻害してしまう可能性のある食品とその理由、そして効率よく鉄分を摂るための食事の工夫について、分かりやすく解説します。
鉄分吸収を妨げる食べ物とその理由
鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や豆類に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は比較的吸収率が高いのですが、非ヘム鉄は吸収率が低いため、工夫が必要です。そして、その吸収を妨げる要因がいくつかあります。
1. タンニンを多く含む飲み物
緑茶、紅茶、コーヒー、ウーロン茶などに含まれる「タンニン」は、非ヘム鉄と結合して不溶性の「タンニン鉄」を形成します。これにより、腸からの鉄分吸収が妨げられます。 対策: 食事中や食後すぐには、これらの飲み物を避け、食後30分~1時間ほど時間を空けてから飲むようにしましょう。
2. 食物繊維が豊富な食品
ごぼう、きのこ、海藻、玄米などに多く含まれる不溶性食物繊維は、腸内の食物の通過を促す一方で、鉄分を含むミネラルの吸収を阻害することがあります。 対策: 食物繊維は腸内環境を整えるために非常に重要なので、摂らないわけにはいきません。バランスの良い食事を心がけ、食物繊維と鉄分を異なる食事で摂るなど、工夫してみましょう。
3. シュウ酸を含む食品
ほうれん草、たけのこ、チョコレートなどに含まれる「シュウ酸」も、非ヘム鉄と結合して吸収を妨げる可能性があります。 対策: シュウ酸は水に溶けやすいため、ほうれん草などを調理する際には、下茹でをして水にさらすことで、ある程度取り除くことができます。
4. フィチン酸を含む食品
大豆、穀物のぬか、ナッツ類などに含まれる「フィチン酸」は、ミネラルと結合して吸収を妨げます。 対策: これらの食品も栄養価が高いため、極端に避ける必要はありません。バランスを意識することが大切です。
5. リン酸塩を含む食品
加工食品や清涼飲料水に含まれる「リン酸塩」も、鉄分の吸収を妨げると言われています。 対策: 栄養バランスの偏りを避けるためにも、加工食品の摂取は控えめにし、できるだけ手作りの食事を心がけましょう。
鉄分吸収を妨げない食事の工夫 Q&A
鉄分を効率よく摂るための食事について、よくある疑問にお答えします。
Q1:妊娠中の貧血対策には、どのくらいの鉄分が必要ですか?
A1:厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、妊娠初期は+2.5mg、中期・後期は+8.0mgの付加量が推奨されています。普段の食事に加えて、意識して鉄分を多く含む食品を摂るようにしましょう。
Q2:タンニンを含む飲み物は、絶対に飲んではいけないのでしょうか?
A2:絶対に飲んではいけないわけではありません。食後すぐに飲むのを避けるなど、タイミングを工夫すれば大丈夫です。リラックス効果もあるので、無理に我慢せず、上手に付き合いましょう。
Q3:鉄分サプリメントを飲んでいるのですが、食事でも気をつけた方が良いですか?
A3:はい、サプリメントはあくまで補助的なものです。食事からの鉄分摂取が基本となります。サプリメントを飲んでいる場合でも、タンニンを含む飲み物や食物繊維の摂りすぎには注意が必要です。
Q4:鉄分を効率よく摂るために、一緒に摂るべき食品はありますか?
A4:ビタミンCを豊富に含む食品を一緒に摂ると、非ヘム鉄の吸収率が上がります。例えば、ほうれん草のおひたしにレモン汁をかけたり、レバー炒めにピーマンを入れたりするなどの工夫がおすすめです。
Q5:調理法で鉄分摂取は変わりますか?
A5:はい。鉄製の鍋やフライパンを使うと、調理中に微量の鉄分が溶け出し、鉄分を補うことができます。
鉄分を効率よく摂るための食事プランの例
食事 | 鉄分源となる食品 | 吸収を助ける食品 | 避けるべきもの |
朝食 | 納豆、ごはん | 納豆にネギ(ビタミンC) | 食後のコーヒー |
昼食 | ほうれん草と卵のソテー | ほうれん草にレモン汁、卵 | 食後の緑茶 |
夕食 | カツオのたたき | たたきに大葉やみょうが(ビタミンC) | 食後の紅茶 |
間食 | ドライフルーツ、プルーン | – | スナック菓子 |
まとめ:自分を労わる「お食事タイム」に
妊娠中のママさん、毎日本当にお疲れ様です。つわりで食事が思うように摂れなかったり、育児に追われてゆっくり食事をする時間がない中で、栄養のことを考えるのは大変ですよね。
「鉄分をしっかり摂らなきゃ」と思うあまり、食事の時間がプレッシャーになってしまっている方もいるかもしれません。でも、無理をする必要はありません。大事なのは、完璧を目指すことではなく、今の自分の体調と向き合い、できる範囲で「いいな」と思える工夫を一つずつ取り入れていくことです。
たとえば、いつもの食事に、少しだけ意識してビタミンCの豊富な果物をプラスしてみたり、食事中は温かい白湯を飲むようにしてみたり。ほんの小さな一歩が、あなたの心と体を健やかに保つことにつながります。食事の時間は、ただ栄養を摂るためだけでなく、心と体を満たす大切な時間です。
あなたの頑張りを、心から応援しています。一人で悩まず、困ったことがあれば、いつでもかかりつけの産婦人科医や助産師さんに相談してくださいね。
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