「和痛分娩って、麻酔をどうやって使うんだろう?」「背中から麻酔って聞くけど、痛くないのかな…」和痛分娩を検討しているプレママさんにとって、最も気になることの一つが「麻酔の方法」ではないでしょうか。
麻酔と聞くと、何となく怖いイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、麻酔の方法やその流れを事前に理解しておくことで、不安は大きく和らぎます。
今回は、和痛分娩で主に用いられる麻酔の種類と、その具体的な手順について分かりやすく解説します。安心して出産に臨むための知識を身につけましょう。
和痛分娩で用いられる主な麻酔方法:硬膜外麻酔
和痛分娩で最も広く使われている麻酔方法は「硬膜外麻酔(こうまくがいますい)」です。
- 硬膜外麻酔とは:背骨の中を通る脊髄神経の外側にある「硬膜外腔」というごくわずかなスペースに、局所麻酔薬を注入する方法です。この麻酔薬が、陣痛の痛みを脳に伝える神経の働きを一時的にブロックすることで、痛みが和らぎます。
- 特徴:
- 意識がある: 全身麻酔とは異なり、ママの意識ははっきりしています。そのため、お産中に医療スタッフと会話したり、赤ちゃんの誕生の瞬間をはっきりと見届けたりすることができます。
- 痛みのコントロールが可能: 麻酔薬の量や注入速度を調整することで、痛みの軽減度合いをコントロールすることができます。いきむ感覚を残すことも可能です。
- 安全性: 非常に安全性が高く、世界中で広く行われている麻酔方法です。
硬膜外麻酔の手順:背中から麻酔は痛い?
硬膜外麻酔の具体的な手順と、よくある疑問について解説します。
- 体位の準備: 麻酔を行う際は、背中を丸めて座るか、横向きになりエビのように体を丸める体位をとります。これは、背骨の間を広げ、麻酔の針を挿入しやすくするためです。
- 局所麻酔: まず、麻酔を刺す部分の皮膚に、注射の痛みを和らげるための局所麻酔を打ちます。この局所麻酔の注射が、チクっとする程度の痛みを感じる場合があります。
- 針の挿入: 局所麻酔が効いてきたら、硬膜外腔に非常に細い針を挿入します。麻酔科医は、感覚を頼りに慎重に針を進めます。この時、少し圧迫感を感じることはありますが、強い痛みを感じることはほとんどありません。
- カテーテル(細いチューブ)の挿入: 針が硬膜外腔に到達したら、その針を通して非常に細いチューブ(カテーテル)を挿入します。針はすぐに抜かれるため、背中に残るのは柔らかいカテーテルだけです。
- 麻酔薬の注入: カテーテルが正しく入っていることを確認してから、麻酔薬を少量ずつ注入し始めます。数分で徐々に痛みが和らいでいくのを感じるでしょう。
- 固定: カテーテルはテープでしっかりと背中に固定されるため、お産中もずれにくくなっています。
【麻酔の痛みについて】 麻酔の針を刺す際、チクっとする痛みはありますが、先に皮膚の局所麻酔をしっかり行うため、想像していたより痛くなかったと感じる方がほとんどです。麻酔科医は、痛みを最小限にするよう細心の注意を払ってくれます。
その他、和痛分娩で用いられる麻酔・鎮痛方法
医療機関によっては、硬膜外麻酔以外の方法が併用されたり、選択肢として提示されたりすることもあります。
- 脊椎麻酔(せきついま酔): 硬膜外腔よりもさらに奥にある「脊髄腔」に麻酔薬を注入する方法です。即効性がありますが、効果の持続時間が短いため、主に帝王切開や分娩の最終段階で用いられることが多いです。
- 笑気ガス: 鼻から吸入するタイプの麻酔薬で、痛みを和らげ、リラックス効果をもたらします。即効性があり、効果が短いため、必要な時に自分で吸入することができます。
- 鎮静剤・鎮痛剤の点滴: 陣痛の初期段階などで、痛みを和らげるために点滴で鎮静剤や鎮痛剤を使用することもあります。
【ママへのメッセージ】
プレママの皆さん、和痛分娩の麻酔について、その方法や手順を知ることで、少しは不安が和らいだでしょうか?麻酔は、痛みに苦しむことなく、あなたが本来持っている「産む力」を最大限に引き出すための医療のサポートです。
「痛みを和らげたい」というあなたの気持ちは、決して弱さではありません。安心して出産に臨めることが、赤ちゃんにとっても最高の環境です。疑問や不安があれば、遠慮なく医療スタッフに質問し、納得した上で出産に臨んでくださいね。
帝王切開と初めて医師から伝えられると不安になって仕方がないとは思いますが、日本の出産現場ではとても多く行われている方法でもあるんです。その分産婦人科や病院では慣れている医師の方が多く、不安なことはすべて相談したほうがよいでしょう。
Q&A:和痛分娩の麻酔について
- Q1: 硬膜外麻酔は、いつから開始するのが一般的ですか?
- A1: 一般的に、陣痛が規則的になり、子宮口が数センチ開いてから(経産婦で2~3cm、初産婦で4~5cm程度)麻酔を開始することが多いです。痛みが強くなってから麻酔を始める場合もありますが、麻酔が効くまでに時間がかかることもあるため、事前に医師と相談して最適なタイミングを決めましょう。
- Q2: 麻酔の副作用やリスクには、どのようなものがありますか?
- A2: 硬膜外麻酔の主な副作用としては、血圧の低下(一時的なめまいや吐き気)、発熱、悪寒、かゆみなどがあります。ごく稀に、麻酔後に頭痛(硬膜穿刺後頭痛)が生じたり、神経損傷などの重篤な合併症が発生したりする可能性もゼロではありません。しかし、発生頻度は非常に低く、医療スタッフが常に監視・管理しています。不安な点は、事前に医師に詳しく説明を求めましょう。
- Q3: 麻酔をすると、お産が進まなくなると聞いたのですが?
- A3: 麻酔によって痛みが和らぐことで、一時的に陣痛が弱まったり、お産の進行が遅れたりする可能性はあります。その場合、陣痛促進剤を使用したり、体位を変えたりするなど、お産をサポートするための処置が行われます。お産が進まなくなることを過度に心配する必要はありません。
- Q4: 麻酔のチューブは、お産が終わったらすぐに抜くのですか?
- A4: はい、出産後、胎盤が娩出されて落ち着いたら、麻酔薬の注入を止め、硬膜外腔に入っていた細いカテーテル(チューブ)はすぐに抜かれます。抜く際の痛みはほとんどありません。麻酔の影響は数時間で徐々に消失します。
- Q5: 葉酸サプリメントは、麻酔分娩を検討している場合でも継続して摂るべきですか?
- A5: はい、麻酔分娩の選択とは関係なく、妊娠中から出産後にかけて葉酸サプリメントを継続して摂取することは非常に重要です。葉酸は赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスク低減に不可欠な栄養素であり、ママの体調維持や産後の回復にも役立ちます。厚生労働省も推奨しているため、医師の指導のもと、継続して摂取しましょう。
和痛分娩の麻酔について理解を深め、安心して出産の日を迎えましょう。
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